プレスリリース、2015年5月5日

第15回日本映画祭、ニッポン・コネクション「レトロスペクティブ」
輝きと躍動 – 相米慎二の世界

今年15回目を迎える日本映画祭「ニッポン・コネクション」は、レトロスペクティブ部門にて、日本映画史に大きくその名を残す、相米慎二監督(1948-2001)作品を特集いたします。2015年6月5日から7日にかけて、フランクフルト市内のドイツ映画博物館にて、相米監督の9本の作品が上映されます。今年のレトロスペクティブは、ドイツ国内ではあまり知られていない相米監督の作品に出会うことのできる、とりわけ貴重な機会となります。印象的な長回しや独創的な色彩に代表される相米監督の革新的な表現技法は、後世の映画監督に多大な影響を与えました。このレトロスペクティブ上映は国際交流基金の協力の下、開催されます。

相米監督の作品は、同名漫画の映画化『翔んだカップル』や、エロティックドラマ『ラブホテル』、さらにはロードムービーの『風花』に至るまで、多岐にわたっています。彼の作品の多くが、先の見えない大人の世界の中で、居場所を求めてあがく若者たちの姿を描いています。そのため彼は、1980〜90年代の日本で人気を集めた青春映画というジャンルの先駆者とも言われています。

今年のレトロスペクティブの発起人であるペトラ・パルマーも、相米慎二監督の作品に魅了された一人です。“相米慎二監督作品を特集するのは、私の長年の願いでした。彼の作品では、俳優の存在に重点が置かれています。彼は俳優に演技の余白を与え、長回しによって彼らの魅力を最大限に引き出すのです。”

1986年の第7回ヨコハマ映画祭で作品賞に輝いたエロティックドラマ『ラブホテル』(1985)では、相米監督は登場人物たちの奔放な性の営みを、覗き見るような感覚で描き出しています。この作品は、「ピンク映画」の古典とされています。『お引っ越し』(1993)は、両親の離婚を食い止めようと画策する幼いレンコの奮闘を、絶妙なユーモアで描くファミリードラマの傑作です。レトロスペクティブ部門のハイライトであり、トリを飾るのが、53歳にして亡くなった彼の遺作である『風花』(2000)です。この荒々しくも詩的なロードムービーの中で主役を務めるのが、多くの女性ファンを魅了する二枚目演技派俳優の浅野忠信です。彼は新設の「ニッポン栄誉賞」初代受賞者として、今年の「ニッポン・コネクション」にゲストで登場いたします。

更に、レトロスペクティブ部門のテーマに合わせて、映画および東アジア研究者であるイエール大学のアーロン・ゲロウ氏をお招きします。ゲロウ氏は2015年6月5日にドイツ映画博物館にて、 “Shinji Somai and the Long Take (相米慎二とロングテイク)”という題で講演を行う予定です。

相米慎二: プロフィール
1948年、岩手県盛岡市生まれ。法学部を中退後、日活に就職。長谷川和彦や寺山修司といった著名な監督のもとでアシスタントを務める。1980年の初監督作品『翔んだカップル』は、興行的に成功を収めただけでなく、日本アカデミー賞の話題賞や、ヨコハマ映画祭での新人監督賞など、数々の賞を獲得。生涯のキャリアで、合計13本の作品を監督した。2001年に53歳の若さで死去。その早すぎる死によって、日本の映画界は1つの大きな才能を失うこととなった。彼の作品は、死後改めて評価され、数々の賞が与えられた。

ニッポン・レトロ上映会場
ドイツ映画博物館: Schaumainkai 41, Frankfurt am Main (フランクフルト市内)
チケットは5月13日より映画博物館にて発売
一般 7ユーロ/割引 5ユーロ

上映作品一覧 − ニッポン・レトロ:相米慎二
『翔んだカップル』(1980)
『ションベン・ライダー』(1983)
『魚影の群れ』(1983)
『台風クラブ』(1985)
『ラブホテル』(1985)
『雪の断章 情熱』(1985)
『お引っ越し』(1993)
『夏の庭』(1994)
『風花』(2000)

作品はすべて、オリジナル日本語音声に英語字幕付きで上映されます。

日本映画祭「ニッポン・コネクション」
15回目を迎える今年の日本映画祭「ニッポン・コネクション」は、6月2日から7日に開催されます。今回も70名の有志が集まり、この世界最大の日本映画祭を運営しています。「ニッポン・コネクション」では、新作映画の上映だけでなく、様々な文化プログラムも催されます。開催場所は、メイン会場の他に、Künstlerhaus Mousonturm(アーティストハウス・ムゾーン塔)およびTheater Willy Praml in der Naxoshalle(ナクソスホール内ヴィリー・プラムル劇場)、ドイツ映画博物館、Mal Seh’n Kino(マール・ゼーン映画館)、Ausstellungsraum Eulengasse(ギャラリー・オイレンガッセ)、さらに福祉施設GDA Wohnstift am Zooとなります。今年から、新しい会場としてDie Käs(ケース劇場)が加わりました。

 

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